友人の話。

山間の、棚田の間を走る細い道が、彼の通学路だった。
ある夏の朝、見覚えのない物が田中に立っているのに気が付いた。
三つの案山子で、どれも少しおかしな格好をしている。

「あんな所に案山子を追加する必要あんのかな?」
そう不思議に思いながら通り過ぎた。

夕方帰ってくると、朝の案山子はどこにも見えなくなっていた。
代わりに、田の持ち主のお爺さんが鎌を手にして、畦道に座り込んでいる。
「逃がした」とかぶつぶつ言いながら、目の前の地面を引っ掻いていた。

「何を逃がしたんだい?」と聞くと「案山子だよ!」と怒鳴られた。

ふっと、頭の中を奇妙なイメージが横切った。
鎌を振り回す祖父さんから、三体の案山子が必死で逃げている姿。

それ以上聞く気になれず、そこから立ち去ったのだという。