『呼んでるよ。行かないと叱られるよ』と言うと、少女は、おびえ始め、今にも泣き出しそうである。

そしてついに、母親が座敷のはずれから姿を現す。和服を着込み、すらっとしている。
初めは、遠くではっきりしないが、近付くにつれ、綺麗な顔だちであることがわかる。

<優しそうな母親じゃないか>そう思って、後を振り向くと、少女は消えている。
<あれ?>不思議に思いながら、母親の方を向く……先ほどの顔だちはかき消え、なんと般若になっている。

恐怖に捕らわれ、<にげなきゃ…>そう思った時、夢から覚める」

馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合わせに皆で出かけるそうです。

腰を上げて、私たちも帰る支度をはじめると…天井から…いや、2階から、タッタッタ…と誰かが走り回る様な足音がしました。
全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。

「聞こえた? これで2度目だな? 今、2階には誰もいないよなぁ」

馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。