一時間に2km歩く速度で移動します。
痕跡はみつかるが古いものばかりで、そうこうするうちに、
昼近くになるころ、足跡とは違う痕跡を見つけました。
獣臭がする。間違いなくヒグマの臭いです。やばい。
彼に言わせれば、ヒグマは特に珍しいものではないのですが、
秋口と春先のヒグマは冬眠前後で、凶暴になる可能性が高いので困るらしい。
ほどなくして、獣臭の元を見つけました。
木の袂に土を掘った形跡があり、キツネが中途半端に埋められていました。
木には、爪を研いだ跡とヒグマの体毛と糞尿らしき形跡。マーキングです。
これは警告です。ここは俺様のもので、近づくことまかりならん、ということだそうです。
そして、まずいという理由がもうひとつありました。
彼はヒグマに対抗する手段をもっていません。
散弾銃は持っているが弾は四発だけです。
重くなるのを嫌い最小限の装備で、さらに鹿用の散弾しか所持してません。
ヒグマのぶ厚い皮膚と筋肉を貫通し、致命傷を負わせるには心もとない。
彼はあきらめて帰ることにしました。