場が一瞬静まりかえった後、皆が揃って立ち上がった。

「さ、夜も遅いし帰るとするか」そう口にすると、家主が血相を変える。
「ちょっ、一緒に確認しに行ってよ! 怖いじゃんか!?」

逃げ損なった。仕方がない。

皆で恐る恐る家中を見て回ったが、メンバーの他には誰の姿も見えなかった。
泣きそうな顔の家主を残し、とっとと引き上げることにする。
暗い山道を車で下っていると、少し落ち着かない心持だった。
後日別件で集まった際、メンバーの一人が奇妙な話をし始める。
祖父にあの夜のことを話したところ、こんなことを言われたのだそうだ。

『あそこらのマミは、気に入った男を山に連れ去るっていうからな。 気を付けろよ』

マミとは人を化かす狸のことなのだという。

「お前ら、狸に告られたんじゃね?」
あの時声が聞こえた私ともう一人は、しばらくそう言ってからかわれた。