周りには先ほどまでの作り笑顔をやめて、ほっとした表情の皆の顔。

「終わったよ」と、隣の席にいたおばさんに言われ、俺の体から一気に力が抜けて行った。

その後、恐ろしい体験を共有した者同士の、本当の宴会が始まった。

さっきまで味が全然わからなかった料理をおいしく頂いて、酒を飲みかわして、その場にいた全ての人と妙な連帯感を共有した。
部屋にかけてた南京錠もすべて回収したようで、おそらく宿泊客の中に、閉じ込められていたことに気付いた人はいないだろう。

気がつくと夜も明けかかっていて、俺は部屋に戻って寝なおした。
目が覚めた時にはもう日は高く昇っていて、部屋の外はなんてことない普通の旅館に戻ってた。

予定時間よりも少し遅れてチェックアウトのしたが、
「あんたはもう仲間だよ、またいつでも来てね」と、旅館の人が総出で見送ってくれた。

みんな名残惜しそうにしてくれたし、俺もこの人たちと離れるのは悲しかった。
もう彼らは俺の友人になっていた。
あの出来事のせいで、すごく強い絆が生まれたのが分かるんだ。


ただ、そうであっても、俺があの旅館に行くことはもう二度とないだろう。