で、空いてる部屋に患者さんと機材を慌てて運び込み、処置が始まった。

とは言え、夜勤組んでた相棒はともかく、俺は産婦人科はシロウト。

血液ルームから輸血パック運んだり(確か全部で六千CCぐらい)、処置や投薬の内容をメモるので精一杯。

「イノバン側注!」「血圧60/30!胎心音微弱!」
とかなんとかドクターとナースが怒鳴りあってるのを、必死で手近な紙や手の甲にボールペンでメモッてた。
後で看護記録にまとめなきゃいけないから。
左手の甲が、ペンのインクで真っ黒になったのを覚えてる。

結論を言うと、結局母胎も胎児も助けられなかった。

元々その妊婦さんは血小板の機能が弱く、それまでも何回か流産を繰り返してたらしい。
「今回は順調だったのに…」

普段は明るい豪快なドクターが肩を落としていた。
西病棟のナースも、半泣きになりながら家族に電話をしていた。