慌てて手の中の物を放り出す。
次の瞬間、足元に積み上がっていた太い紐が、凄い勢いで水中に引き戻された。
ラインはあっという間に淵の中へ姿を消し、置いていた竿も没して見えなくなる。

しばらく二人で呆然と水面を見やっていたが、やがてぷかりと、彼の竿だけが浮かび上がってきた。

恐る恐る引き寄せてみると、糸は切られていてほとんど残っていなかった。

「 …お前、何かに釣られかけたんじゃないか?」

連れが渋い顔をして聞いてきたが、答えようもない。
すぐにその場から撤退したのだという。

以来、その淵の近くには寄らないように注意しているのだそうだ。