友人の話。

釣り仲間と二人で、近場の池へ夜釣りに出かけた。
場所は程良く山に踏み入った所で、月明かりの下、竿を振っていたという。

いきなり水音がした。重い物が飛び込んだかのような、そんな音。
少し離れた水辺にいつの間にか子供が現れていて、石を拾い上げては投げ込んでいる。
今時珍しい着物姿で、女の子のようだ。

「こんな時間に何してんだろ。止めてもらってくるわ」

仲間がそう言って子供の方へ向かう。
傍に達したとみるや、即座に駆け戻ってきた。

「帰るぞ!」それだけを口にし、竿を抱えて走り出す。

彼も慌てて後を追い、入り口に停めてあった車まで駆け戻った。
様子からして、自分を置き去りにしてでも帰りそうな雰囲気を感じたのだ。

どうしたんだ一体? 発進した車内でそう尋ねたところ、青い顔で答えられた。

「あの子、顔がノッペラボウだった」

街の灯りが見えるまで、二人とも口を開かなかったという。