同級生の話。
彼がまだ小学生だった頃、帰り道で俄雨に祟られた。
傘を持っていなかったので、途中にあったバス停の屋根の下へ逃げ込んだ。
濡れた身体を払いながら困った顔をしていると、スッと何かが後ろから頭の上に差し出される。
見上げると赤い傘があった。
驚いて振り向くと、優しそうな女の人が微笑んでいて、こう話し掛けてきた。
「傘がないの? 家まで送ってあげようか」
あぁ助かったと思い、有り難く申し出を受けることにする。
女の人の傘に入れて貰いながら、道々色んなことを話した。
特に女性は彼のことを聞きたがったので、身の回りであったことや家族のことを思い付くままに喋ったのだという。
どれくらい歩いただろうか、いつの間にか雨が小降りになっていた。
それに気が付いた女性はハッとした様子で、申し訳なさそうに謝ってきた。
「御免なさい、もう戻らないと 。
…雨が止んだら出ていられないから」
その後がはっきりしないのだという。
気が付くと横に並んでいた女性は、幻のように消え失せていた。
慌てて辺りを見回すと、そこはまるで見覚えのない山の中だった。
雨は止んでいたが、日が落ちかけていて、夜がそこまで迫ってきている。