「内緒だよ。借金取りから逃げてるんだろうって変な噂流されるから」

そう念を押されたので、誰にも話さないと約束した。

一年半ほど過ぎると、隣家は何処かへ引っ越していった。
彼はあの時聞いた話を誰にも話さず、その友人の記憶も薄れていった。

それから半年ほど経ったある真夜中、彼は目を覚ました。
何だろう、表の方から低い音が響いてくる。


 ゴリン ゴーリン


何か重たい物を引き摺っているかのような音だった。
ぼんやりと寝床の中で聞いている内、音が隣家の周りを巡っているらしい
ことに気が付いた。
同時に、あの話も思い出す。

音の出所を確認するのは簡単だ。
二階角にある子供部屋は隣家に面している。
カーテンさえ開ければ、何が隣家の庭に入り込んでいるのか見える筈だ。

しかし、ベッドから出ることは出来なかった。
その何かを見てしまうのがひどく怖かったからだという。
重く低い音はしばらく隣家で響いていたが、その内に聞こえなくなった。