知り合いの話。

彼がまだ幼い頃、隣の借家に移ってきた家族があった。

同い年の気のいい男の子がいて、あっという間に仲良くなったという。
親しくなった後に教えてもらったのだが、隣家は矢鱈と引越ししていたらしい。

他所に移る予定など何もない彼が羨ましがると、悲しそうな顔でこう言われた。

「あんまり良くないよ。
 折角友達ができても、すぐに別れることになっちゃうんだし。
 学校によっても授業の進み具合とか違うしね、勉強も大変だよ。
 でも仕方ないんだ。追われてるから」

「追われてるって… 一体何に追われてるの?」
好奇心丸出しでそう聞いてみた。

「うちってその昔さ、遠くの山奥で神主みたいなことしてたんだって。
 でも廃村になるから社をたたんで村を捨てたそうなんだ。
 そこで祀っていた神様っていうのかな、山の主様がとても怖い神様でね。
 祀っていないと祟りを落とす暴れ神だったんだって。
 だからうちは一所に留まれないんだ。
 神様、執念深くてきっと追いかけてくるから。
 幸い神様は足が遅いらしい。
 身体が石とか岩でできているって話だから。
 だから神様に追いつかれる前に、うちは引越しして逃げ続けてるんだ」