同級生の話。

一人で夏山を縦走していた時のことだ。
小さなテントでぐっすり眠っていた深夜、どこか遠くから声が聞こえてきた。

「おーい」とくぐもったような声が耳に届く。
寝惚け眼を擦りながら「何だよ?」と呟いた次の瞬間。

グラッと地面が揺れた。

パッと目が覚め、慌てて辺りを調べたが別におかしな所はない。
地震の揺れでもないようだ。
「おーい」と呼ぶ声はしつこく続いている。

…この声、夢じゃなかったんだ。

恐る恐るテントから顔を出し「誰?」と返してみた。

と、また地面がグラッと来た。
緊張した。
周りの樹木は動いていない。
揺れたのは自分のテントだけだ。
首を引っ込めて、シュラフに潜り込む。
何だこの声?と聞き耳を立てていると、どうにも奇妙な感じがした。
声が地の下の方から聞こえてくるような気がしたのだ。

もう絶対に無視する。
そう決めて腹を括り、そのまま眠ることにした。