知り合いの話。
アメリカに留学していた時、学友がトレッキングに連れて行ってくれたという。
草木もまばらな岩山を通り抜けている時、ガイドが徐に石を拾い上げた。
「面白いものを見せてあげよう」と、いきなり石を斜面上方の岩に投げつける。
キャンッ!
石が当たるや、岩はまるで犬のような鳴き声を上げた。
次の瞬間、岩は尻尾をフサフサさせた狐に姿を変え、斜面を駆け上り逃げ去った。
「丸くなったあいつに全然気が付かなかったろう?
ああやってトレッカーに近よっちゃ、食べ物を掠めていくんだ」
笑うガイドの説明を聞きながら、友人と二人首を傾げた。
逃げていく姿を見た感じでは、狐の毛色や様子は辺りの岩肌とかなり違っていた。
それなのにどうして気が付かなかったんだろう?
「びっくりだ。狐はアメリカでも人を化かすんだぜ」
彼は大真面目でそう教えてくれた。