小さい貿易の仕事をしてたので、以前は頻繁にアジア各国に行った。
宿泊は大抵経費節約の為、激安ボロホテル。
香港(返還前)で、様々な手違いが重なりホテルが予約できてなかった
ことがあった。
既に日を跨ぐ時刻になっていたので他の宿を探すわけにも行かず、
押し問答の末無理やり部屋を用意させた。
30分くらい、仮眠してたボーイとかが起きて来て
二・三人で相談(広東語で喚いてる�殆ど喧嘩に見える)してる。
暫くしたら、しぶしぶ、という顔で 付いて来い」と言われた。
案内されたのは、明らかに普段全く使ってないと思われる
淀んだ空気が篭った部屋だった。
間取りとかつくりは普通だったけど、全ての家具が埃まみれ。
若干うんざりしながらも、習慣でドアノブに椅子の背もたれをあてがったりして
寝る準備を整えてから湯温の安定しないシャワーを浴びた。
バスルームに居る間中、部屋の方に人のいるような気配がする。
音がする訳ではない。ドアを開けても、勿論誰も居ない。
アタマを拭きながら部屋に戻り、ベッド横の鏡に向かうと、
視線の隅をさっ、さっと横切る陰のようなものが見える。
あれっ、と思い眼鏡を掛けるともう見えない。
オカシイと思いつつもベッドに横になった途端、
「部屋の外より、中の方がヤバイ!」
と何故か思い込んでしまい、アタマの中で警報が鳴ってるような感覚に襲われて、
大急ぎで荷物を纏めてロビーに戻った。
ボーイに「カネはちゃんと払うからロビーのソファーで寝させろ」と話すと、
全く不思議そうな顔もせず黙って了解された。
あのまま寝てたらどんな体験をしたのだろうか