知り合いの話
彼はその昔、仲間と連れ立ってとある山の研修所を一夜借り切ったことがあった。
適当な○○会という団体名だけをデッチあげて、皆で割り勘で借り切ったのだ。
由緒あると言われるその研修所は、吹き抜けの広大なロビーに豪華なソファと暖炉を備え、重厚な調度品は年季が入りますます重厚さを増していた。
そのロビーから長い廊下が一直線に伸び、その片側には個室が並び、反対側に並んだ窓からは裏にそびえる小山が見えた。
若い彼らにとって結構豪華なディナーを食べ、ひとりきり談笑したらそろそろ夜も更け、各自が個室に入って寝入った後、寝付けなかった連中が三々五々廊下にたむろいだした。
若い連中が夜を持て余して始める事の一つが怪談だ。
ある者は壁に背もたれ ある者は絨毯敷きの廊下に寝転び、廊下の両側でそれぞれ思い思いの怪談を語っていた。怪談を語る彼らを廊下の窓から差し込む月光が明々と照らしていた。
が、
その瞬間、みながピタッと話をやめ口を閉ざした。合図があった訳でも打ち合わせた訳でもなく、ただ何となく皆が同時に 話が途切れてしまったのだ。その気まずい沈黙を気まずいと思う間もなく、ロビーと反対側の廊下の端から何とも言えない気配が漂ってきた。