「彼等の霊が出るんですか?」そう聞いたら
「だから霊じゃなくて、妖怪なんだって」と従弟さんに横槍を入れられた。

「こっちも見てみなさい」叔父さんはそういって背後に隠していたまたまたボロっちい
冊子のようなものを差し出してきた。
開かれていたページは手書きで、ところどころ漢字や仮名の使いが古くて読みづらかったが、
大体こんな感じだった。

「件の青年達は時機を悟り本日未明、潔く帰宅した。国の今後を担う若者達は聡明だ。
腹を割って果てた首謀者郎党は四十を過ぎ分別もあるのにけしからん。気になるのは
今朝運ばれてきた彼等の遺体はおよそ刃物によるものでなく、手榴弾を頬張って爆死
したかのように腹が裂けていたことだ。臭い始めており、あまりに酷なので長くは見なかったが

割腹ではないことだけは自分にも分かる。若者達も多くを語らず。ただ夜更けに
首謀者郎党、人知れず割腹していたとのみ。おそらく猿神様。」

「猿神ってなんですか」とおもむろに聞くと叔父さんは鼻息を荒くして
「このあたりの守り神で、(村の)入り口の所にほこらがあったろう?あそこで祀られて
いるんだ。ここは霊峰というほどの所ではないが、猿神様に古くから守られているんだ。

だから、登山客や観光客に気安く入られると困るわけだ。神様が何をするか、知れない
からね」
つまりは村の若者をそそのかしたオッサン達を猿神様が夜中に襲撃して腹をブチ割った、
というお話。んで、山のマナーを知らないよそ者が下手なことをして同じ目に合わないよう、
敢えて観光化は慎んでいる。とのことだった。

その後は本家の家の幽霊話とかを聞いて、
酒飲んで寝た。
翌日、友人にその話を質した。
「その手書きの方は大叔父か大大叔父の日記なんだけどね。俺の時は本家の人もいたから
そっちの文も読んだ。登山ブームの時に鉄道会社の調査員が色々と話をもちかけてきたけど、
山の神を理由に断ったみたいなことが本家の人の日記に書いてあったよ。最初は観光化に
取り残されて苦し紛れの後付かと思ってたけど、案外本人達は本気みたいだね」とのこと。