海の仲間の先輩の魚の専門家でいろいろな本やディジタルメディアで活躍中の方に聞いた。
海洋生物のかなりアブナイのものに遭遇して体験している方だ。
そんな百戦錬磨の先輩に私は皆の前で今まで経験した一番コワイ話を所望した。
「...ああ、そりゃ、居眠りだな」
「いねむり、ですか?」
ホオジロザメと格闘したとか、海底洞窟に閉じ込められたとかいう
大冒険譚を期待した私は少々失望したが先輩はかまわず続けた。
「マンタの回遊の時期だからとリーフのへりに腰掛けて待っていたら、あったかくって気持ち良くって、
ふっと気がついたら眠ってたんだ、ありゃぁなにより怖かった」
私は震え上がった。たしかに、コワイ。すんごくコワイ。
え?なんでコワイのかって?海底で寝込んで空気が無くなったらコワイ?
ブブー、ハズレ。海中で空気が無くなったって、リーフはサンゴ礁の事だからそれほど深くない。
ホントウに空気がなくなったらBCD(ベスト)の中の空気を吸えば良い。
浮上するに従って空気は膨張するからゆっくり落ち着いて浮上すればよい。
解説しよう。リーフのへり腰掛けて、がポイントだ。
リーフというのはサンゴ礁だから、日本の場合そこは島である。
サンゴ礁を持つ島というのは火山島で海底深くからそびえる険しい山である。
リーフのへりに腰掛けているというのであるから中性浮力をとっているのではない。
と、いうことは....自分の知らぬ間に奈落の底へのサイレントダイブである。
水中感覚に馴れた身体は落下中も目覚めないだろうな....そして、死体は、上がるまい。