知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
「石も生薬の材料に使います。
竜の骨とか呼んでいて、まぁそのほとんどが化石なんですけどね。
こんなことがありました。
ある時、知り合いの薬屋に御邪魔していると、一人の男性が買ってくれと言って
大きな灰褐色の物体を持ち込んできたのです。
長さは男の背ほどもあって、古い柳の幹ほども太さがありました。
男曰く、これは間違いなく竜の骨だと」
薬屋はしばらくそれを調べていたが、やがて顔を上げて言った。
『うちじゃこれは扱えない。
○○へ行ってみな。あそこなら捌けるだろう』
ちょっと不思議に思ったという。
そこの薬屋は、確か竜骨も扱っていた筈なので。
男が去った後で「何か問題があったのですか?」と聞いてみた。
薬屋は肩を竦めてこう答えた。
『問題というより、私にはあれを扱う知識がないんだ。
あれはまだ骨の部分が多くて、完全には石と変じていなかったから。
どういう動物のどこの骨かわからないと、とても狙い通りの薬効は出せない』