ゴム手袋をはずして目頭を押さえても涙はどんどん出てきて
嗚咽みたいな声としゃっくりが止まらなかった。
滲んだ視界にクロがぼやけて映って、それでもまだちゃんと
俺に何かを伝えようとしてくれていた。
「わがっだ、わがっだがら」
俺はぐしぐし言いながらクロにそう言った。
胸が締め付けられて息が出来ない。
置物みたいに動かないクロの顔は凛としているのにも関わらず
何故だかすごく無理をしているみたいで、俺はそれがたまらなく悲しい事のように感じた。
ゴミ捨て場で泣いている俺を上司が見つけて
それでも涙が止まらない俺は「すいません、すいません」としか言えなかった。
上司に付き添われながら戻る時、ゴミ捨て場のほうを見るとクロはもうそこには居なかった。
会社に電話が掛かってきて「祖母が死んだ」という知らせを聞かされたのはすぐ後のことだった。
今でも俺んちは暖かい日に猫が来てひなたぼっこをしたり、母に餌をねだったりしている。
俺はまだ見た事がないのだけれど、クロが時折背筋を伸ばし縁側を見るのだそうだ。
そうした時我が家では、座布団とお茶とお菓子を縁側に置くようにしている。