母には弟がいた。
末っ子の靖叔父さんだ。

3人の伯父達は船乗りになったが、靖叔父さんは大学を出た後警察官になった。
警察官として勤務していた叔父さんは、ある日突然失踪した。
叔父さんの失踪には不可解な点も多かったが、生死も不明なまま20年以上が経過していた。
俺に靖叔父さんの記憶はないのだが、祖母や母は叔父さんの事で心を痛め続けていた。

財産の整理などの必要もあって、叔父さんは失踪宣告を受け法律上は「死んだ」ことになっていた。
だが、祖母は叔父さんが生きていると信じていたようだ。

叔父さんの行方を捜して方々に手を尽くし、霊能者にまで相談していたそうだ。
霊能者によると、靖叔父さんは「生きている」ということだった。

靖叔父さんは祖母の夢枕に度々立ったが、いつも祖母に背を向けていた。
霊能者の話によれば、夢枕に立った人が背を向けているのは、その人が生きている証拠らしい。

祖母は叔父さんの心配をしながら10年ほど前に亡くなった。