風呂から上がると、弟が目を覚ましていて、台所でお茶を飲んでいた。
「あ、悪い。起こしちゃった?」
何気なく謝罪を口にしたところ、弟は首を振って不気味なことを言い出した。
「いや、何というかさ。庭に誰かが入り込んだ気配がして、目が覚めたんだ」
「気配?」
「うん、誰かがうちの庭でチャリンコ乗り回してるかのような、そんな音がして。
ベルを鳴らす音も聞こえたから、てっきり近所の悪餓鬼かと思って。
コラァ!って外を覗いたんだけど、誰もいないんだよね、コレが」
気のせいじゃなかったんだ!
弟の言葉を聞いて、一気に恐怖が戻ってきた。
急に青くなった姉を訝しむ彼に、峠道でのことを話してみた。
話している内に彼女にも聞こえた。
庭で自転車のベルが鳴るのを。
慌てて弟と一緒に庭を確認した。
月明かりで白々とした砂の上には、誰の姿も見えなかった。
結局、その晩は姉弟二人して居間に陣取り、一睡も出来なかったという。
それ以来彼女は、帰宅が遅くならないよう注意しているのだそうだ。