知り合いの話。

運悪く、雪崩に巻き込まれた登山者がいると連絡が入った。
山小屋に詰めていた彼も捜索に加わったという。
雪中にゾンデ棒を突き刺して探っていると、突然ゾンデが固まって動かなくなった。
押しても引いてもびくともしない。

驚いていると、何かに掴まれたみたいにゾンデが引っ張られる。
慌てて手を構え直した次の瞬間、手の中の感触は通常のものに戻っていた。

何となく予感がして、その下を掘ってみた。
果たして、探していた遭難者の遺体が出てきたそうだ。

しかし、遭難者が埋まっていたのは4m以上も下の雪中だった。
その時使用していたゾンデ棒の長さは精々3m程度。
一体何がゾンデを引っ張っていたのか。

「俺はここにいるぞって、気が付いてほしかったんだろうな」
どこか寂しそうに彼はそう口にした。