「A」の頃からずっと、R社の事務所では、毎晩遅くまで事務や営業の社員の方々が残業していた。
しかしKさんTさんの不幸があり、Uさんが病床で亡くなる頃、R社で夜に残業する人はいなくなっていた。

2006年初秋の頃だ。

夕暮れに用事があって18:30頃にR社に行ってみると施錠され真っ暗で誰もいない。おかしいな。だいたいいつも21:00頃までは誰かしら残ってるのに…
そんな風に、R社の社員が誰も残業しない状態がしばらく続いた。

ある日「皆さん最近は早くお帰りなのですね」と、R社の数名に事情を聞いた。
皆、口を揃えて

「出るの」

と、そっと小さな声で答えてくれた。
おばけが怖くて夜に誰も残らなくなったらしい。

毎晩ではないが、20:00頃になると30cmほどの妖精のような「小さなおじさん」が事務所内を駆け回り始める。
また玄関近くの観葉植物の陰から2mを越す「大きなおじさん」が佇んでじっとこっちを見ていることが頻繁にあるらしかった。

彼らは”駆け回るだけ””そこにいるだけ”で、おどかしたり話しかけたり危害を加えては来ない。が、気持ちのいいものではない。
大小の"おじさん"たちの顔には、誰も特に見覚えは無いとのこと。
しかし「見覚え無しという事にしているだけで実は…」という話のように思えた。
"おじさん"などという言い方をしているのは、知っている顔だからなのだろう。

私はもうそれ以上聞かなかった。
"おじさん"たちの姿は人によって見えたり見えなかったり。見える人の中には「もういやだ」と少々ノイローゼ気味の人もいた。
しかし社長には見えない。社長はちょいとワンマンで厳しい方なので、社員は「なんとかして欲しい」と訴えづらいらしかった。