知り合いの話。

彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

「女が出る山、ってのを聞いたことがある。
 そこに篭もると、夜中にでかい女が現れて、強引に何事かを約束させるんだと。
 でな、それを破っちまうと罰を当てるっていうんだ。
 そのでかい女が里の家まで押し掛けてきて、舌を千切り取っていくんだとか。
 実際そこの猟師にゃ、舌が短くて上手く喋れねえ爺さんが何人かいたよ。
 いや、本当に山女に舌獲られたのかどうかはわからねえけど」
「しかし遠くの山じゃ、見つかると問答無用で追い掛けてきて、力尽くで舌を
 千切ってく女ってのもいたんだと。
そこまでいくとまるで鬼だよなぁ。
 約束で見逃してくれただけ、あそこの山女は優しかったのかもしれねえ」

最後に皮肉っぽく付け足す。

「もっとも、元よりどうしても守れない類の約束だった…って話も聞いたがよ」