友人の話。

彼は幼い頃、実家に里帰りした折はよく裏山で遊んでいたのだが、その都度祖父に
注意されていたことがあった。
「森ン奥から誰かが手招きしてきても、絶対にそっちに行くんじゃないぞ。
 そりゃあマネダケとかマネキダケって言う、椎茸のお化けだからよ。
 逃げられないよう手足落とされて、ほだ木にされちまうぞ」
「一度だけ、森の中から手招く人影を見たことがある」そう彼は言う。

ボンヤリした緑色の影が、ゆるりゆるりと招くように右手を振っていた。
誰何の声を掛けても返答がなかったので、慌てて家まで逃げ帰ったという。

「幸いにもその後は見なかったけどな。ありゃ気味が悪かった」

そう口にして、嫌そうに頭を振っていた。