身構えている彼らの前に現れたのは…
間違いなく先程、上がっていったスーツ姿の男だった。
そして先程とまったく同じ質問を発する。
「すいません、私と同じ顔をした男性を見掛けませんでしたか?」
「…つい今し方、ここを上って行かれましたよ」
「やぁそうでしたか。それはどうもありがとうございました。では」
嬉しそうに感謝の言葉を述べてから、男は再び真っ暗な道に消えていった。
とても寝るどころではなくなり騒いでいると、三度目の足音が上ってくる。
「おい、まさか…」
間を置かず、まったく同じ顔と格好をした三人目が現れた。
「すいません、私と同じ顔をした男性を見掛けませんでしたか?」
直前の会話をそのまま繰り返し、やはり頂上へと消えていく。
「場所変えるぞ。どうにもここじゃ寝たくない」
部長がそう決定すると、皆も慌ててテントを畳みに掛かる。
撤収に手間取り、それから都合五回、同じ男と同じ会話を繰り返してしまった。
「すいません、私と同じ顔をした男性を見掛けませんでしたか?」
そんな言葉を聞き続けて、何とかそこを後にする。
結局、そこからかなり離れた場所で野営し直したのだという。
件の男はもうそれ以上姿を見せなかったそうだ。