モリゾーだっけ、あれから目と鼻と口と色を引いて触角だけを付けたような感じだった
耳元でなっているはずの音楽も聞き取れないような、もうほんとうの無音だった
手足の感覚が無くて、目も反らせないまま、頭だけが動く、金縛りみたいだった
ヤマガミ様も俺を見ていた、異常なほど体感速度が圧縮されたみたいに長い時間があった
すると、ヤマガミ様が視界の中で大きくなってきた
俺はヤマガミ様の全身を見ていた、ヤマガミ様の手も足も動いてないのを確認していた
俺は立ちすくんでいた、足が前に進めるなら逃げ出している
ヤマガミ様が大きくなっているように見えたのは、何のアクションも無くこちらに接近してきていたからだと気付いた
あと10mほどの距離という所で、唐突にあることに気づいた
いままで近づいてきたという例は無かった
もし、ヤマガミ様が人を食うとしたら?
今まで崖に落とされた棺桶の中の死体を食べていたとしたら?
人里に糧を与えていたのも人間がいなくなり死体を食えなくなるのを防ぐためとしたら?
何十年も人を食えないで腹を空かしてたとしたら?
俺が格好の餌としたら?