「しかし、この連れは性質が悪い奴だったみたいでな。
何だかんだ煽てて強請って、無理矢理取り上げるような形で持って行っちまった。
その夕方に、山ほど獲物を持ち帰ってよ。
『こりゃぁ具合がええ。しばらく借りとくわ』ってニヤニヤ笑ってた」
「貸した奴は青い顔してよ。
『お前、絶対に罰当たるぞ。もう俺は関係ねえ。笛はお前が責任取って持ってろ』
って泣きそうになりながら吐き捨てた。
連れの奴は嫌な笑いを浮かべてよ。
『おう、そんなら貰うわい』って嬉しそうに家に帰ったんだ」
「そうしたらよ、その日の夜、その連れの家で騒ぎがあったっていうんだ。
皆が寝静まった夜中に、バタバタと大きな音がしてよ。
人の叫び声も聞こえたって話だ。
事情を知ってる村の連中は、誰も近よらなかったって。
翌朝恐る恐る覗いてみると、そいつの姿はおろか、そいつのおっ母もいなくなって
いたらしい。
不思議なことに、昨夜あれだけ音がしたっていうのに、家の中は綺麗に片付いていた
ってよ。まるで何もなかったかのように。
あぁ、結局そのまんまで、二度と帰ってはこなんだとさ」
「笛を取られた方も恐れちまって、それ以降山に入ることはなかったって話だ。
まぁ、分をわきまえない輩は、それなりの目に遭うってことだな。
人ってやつは取って食らうだけじゃない。
取って食われることもあるんだってことは、忘れちゃならねえよ」
祖父さんはしみじみとそう言った。