知り合いの話。

彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

「変わったモノが出る山があったな。山というか沢だったんだが。
 雨風が凌げる場所があったんで、よくそこで野宿してたんだわ。
 これが次の日起きてみると、なぜか鉄砲に歯形が付いてる。
 黒鉄で出来た筒にだけ、牙で囓ったような傷痕がな」

「その山には山犬さんっていう賢い御犬様がいて、鉄を嫌っているって話だった。
 確かに噛まれるのは鉄砲だけで、他の物は儂らの身体も含め、何の被害も無え。
 だからそんな不思議なモノもいるのかもなぁって、そう思ったよ。
 そこにゃよく泊まらせて貰ったけど、その近辺じゃ獣を狩る奴ぁいなかったな。
 鉄砲撃ちも気を遣っていたのかもしれねえ」

猟の帰りに、獲物の一部を沢に置いて帰っていた者もいたという。

「今はもう猟師専門って奴もいないしよ、あんな山奥まで行くことも無えだろう。
 山犬さん、どうしてっかな」
祖父さんはそう言って懐かしそうに目を細めた。