知り合いの話。
彼の地元の山では、昔から「頬撫で」と呼ばれる化け物が出ていたという。
夜道を歩いていると、傍の繁みからヒヤッとした手が出てきて、頬を撫でていくのだと。
遭遇するのは大抵子供だったので、そこを通る際にはよく大人が一緒に付いていった。
ある年に町の若手が総出で、清掃作業を行うことになった。
なぜに突然清掃の運びになったのか、その説明は一切無かったという。
清掃対象は丁度、頬撫でが出ると言われた辺りだった。
半日の作業の結果、ごっそりとゴミが回収された。
不思議なことに、その殆どが軍手やゴム手袋といった類の物だった。
また回収されたそれらのゴミが、焼却される前に寺で供養されたのも腑に落ちなかった。
「でもね。あの掃除以来、頬撫でがトンと出なくなったんだわ。
あのゴミ手袋、何か関係あったのかなぁ」
現在そこはゴミ捨て禁止の札が立てられており、違反者は厳しく罰せられている。