友人の話。

彼の実家は、山を幾つも持っている旧い名家だ。

その山の一つに御堂があり、大きな黒い牛を描いた木板が保管されている。
画家の手による作品ではなく、何代も前の主が絵から何まで自ら拵えた物だとか。

伝わるところによると、その主の代の頃、凶賊が屋敷に押し入ったのだという。
使用人が次々と斬り倒され、最早これまでと覚悟を決めたその時。

何処からともなく黒い颶風が飛び込んできて、あっという間に賊どもを打ち倒した。
風の中心にいたのは、信じられないほど大きく黒い牛だった。
真黒い身体の中で目だけが赤く輝いている。

主は震えながらも尋ねてみた。
「もしやあなたは、この家の守り神様で?」

その家は牛馬の取引で財を成していたそうで、そのことから黒牛を見て神様かと
連想したものであろうか。 その家は牛馬の取引で財を成していたそうで、そのことから黒牛を見て神様かと
連想したものであろうか。