友人の話。
彼女の母親は非常に霊感の強い人らしい。
しかし確かに霊感は強いのだが、それに対する反応は鈍いというか、のんびりしたこと
この上ないのだという。
その母君が彼女に語って聞かせた中にこんな話がある。
「昔はうちの実家も薪炊きだったからね。
山で薪拾うのは子供の仕事だったんだよ。
私も妹とよく裏山に登って仕事してたんだけど、そこでジキトリに憑かれたんだ」
ジキトリというのは一種の餓鬼憑きで、これに取り憑かれると急に空腹になってしまい、
力が抜けて動けなくなるのだという。
「ふらぁっと目の前が暗くなったんで、ああこりゃ憑かれたわって直ぐわかった。
普通はそこで動けなくなるっていうんだけど、何くそ!って踏ん張ったのね。
そしたら段々と脱力したのが治まってきて、そのうち平気になっちゃった。
あちゃぁ、それが拙かったみたい」
「何が拙いの?」
「取り憑かれた人が仏さんのご飯食べたり、それが出来ずに飢えて死んだりすると、
ジキトリは離れて山に帰るっていうんだけど… 。
私の場合、そのどちらでもないのね。
だから私にはまだあのジキトリさんが憑いているのよ、どうやらこれが」