友人の話。

「うちの本家は、○○の山奥にあるんだけどね。
 そこの地頭っていうか結構大きな家だったらしいの。
 でね、江戸時代まで遡るんだけど、そこの御先祖様が雷様と出会ったっていうのね」

「納屋で縄打ってると、ドーンと大きな音が裏の畑でしたっていうのね。
 御先祖様が慌てて畑に向かうと、肌の真っ黒い大きな男の人が倒れてたって。
 どうしたの?って尋ねたら、おかしなことを言うわけ。

 『いやいや、菜を駄目にしてスマンスマン』

 『うっかり足を踏み外して、つい下まで落ちてしもうた』
 ってそんなことを言ったんだって」

「どこから落ちたの?って聞いたらその人、空を指差して苦笑したんですって。
 あぁこりゃ雷様だって気が付いて、失礼があっちゃいけないって思ったそうで。
 でも先方えらく腰が低かったみたいで、

 『迷惑を掛けた。何か詫びが出来ないか?』
 そう聞いてきたっていうのね。
 そんな詫びなんてって恐れ入ったらしいんだけど、『どうしても』っていうから、
 では稲光が私どもに落ちないようにして下さいって、そう答えたんだって」

「すると雷様が言ったんだって。
 『狙って落としている訳ではないからそれは難しい』
 『代わりに今度から、天が鳴ったらあすこの草で織った幕の下に入ると良い』
 『アズマ(雷)が避けて通るから』
 そう言って別れを告げてから、山を滑るように登って見えなくなったっていうのね」