伝わる話によれば、昔からここの山にはヤマンボと呼ばれる妖怪がいて、
団栗や他の木の実を埋めては育てているのだと。

「何でそんなことするのかって、そこまでは伝えられてないですけど。
 思うに恐らく、自分たちが食べる樹の実を育てているんじゃないですかね。
 私は見たことがないんで、あくまでも想像ですけども」

へえ、とそれを聞いて感心したそうだ。

私にこの話をしてくれながら、彼はこうも続けた。

「聞いたことがあるんだけど、日本の自然は手を加えず放っておくと森になるんだと。
 恐らく気候帯の所為だろうけど、ひょっとしたら俺があの夜見た、何というか精霊
 みたいなのがいて、樹とか森とかを育てているのかもな。そう思った」

この国にはそんな精霊もいるかもな。聞きながら、私もそう思った。