「あぶない!」

えっ!? 地面を見下ろすと、すぐ上にいる筈の少女がそこに居た。
泣きそうな顔で、彼を引き留めるかのように手を伸ばして。

何処かでパンと乾いた音が聞こえ、頭上で硬い音が響く。

 チン!チン!チン!

何か熱い物が、幾つか頬を掠めて落ちていった。
続いて「あっ!?」と慌てたような声が聞こえた。

鉄面に付いたばかりの傷を見た。弾痕だ。
禁猟区だというのに、入り込んでブッ放した非常識が居るらしい。

「おわぁ!?」
遅ればせながら悲鳴が出た。慌てて鉄塔にしがみ付く。
あっあの女の子は!? 必死で上を見上げると、そこには誰も居なかった。
混乱しながらも、滑落しないよう注意しながら下りることにした。

無事地上に着いて、腰が抜けたようにへたり込んでしまう。
散弾を撃った輩は逃げ出したものか、ついに姿を見せることはなかった。

しばらく待って息を整えてから、やっとの事で顔を上げてみた。
鉄塔の反対側の脚の方に、佇む小さな二つの人影があった。
上から下まで、まったく同じ格好をした、双子のような女の子。
一方は、残念そうに口元を歪めて苦笑いをしていた。
そしてもう一方は、泣きそうな顔で手を振っていた。
早くここから去れとでもいうような、そんな仕草だったという。
声を掛けようとすると、二人とも空気に溶けるように消えてしまった。

“…何かが自分を危ない目に遭わせ、別の何かがそれを救った?… ”
そこまで考えてから、走るようにして逃げ出したという。