小走りになりながら、なんとか薄暗いうちに元の入り口に辿り着くと、親父が心配そうな顔で出迎えてくれた。

祖母は、事情はよくわからなかったが、車の中で泣いていた。
帰りの車の中で、親父にオッサンの話をすると、親父は首をかしげていた。
「その男なら俺も見た。こんな時間に山に入っていくなんて変だなと思ったが、お前たちの助けになるかもしれないと思って、『子どもたちを見かけたら、まっすぐ進むように言ってください』と伝えておいたんだ」

実際、俺たちが引き返さずに進んでいたら、あと5分ほどで下山できるようなショートコースだったらしい。

後部座席で、泣き疲れて眠っている祖母と心配疲れで爆睡している妹を見ながら、俺、鳥肌が治まらなかった。
あのオッサンは、俺に嘘を教えたとき、目が釣りあがっていた。嬉しそうに。

山道で迷う怖さは、登山家なら身に染みているはずだ。
子どもの俺たちに不要な不安を与える意味はなんだったんだろう。

そして、オッサンは何しにあんな時間に山に入ってきたんだろう。