知り合いの話。

彼の地元には一つ険しい峰があった。

「そこに登って死んではならない」という約束事が厳しく守られていたという。

そこに入る時は必ず複数人で登り、事故等の不幸があった場合にも、すぐに遺体を
近場の谷地に降ろせる態勢で臨んでいた。

「前みたく山の神サァに、人の味を覚えられると困るからの」

そうこぼした祖父の言葉が気にかかったが、一体過去にどんなことがあったのかは
終に教えてくれなかったそうだ。