知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

「闘蟋っていう娯楽があるんです。
 俗に言うとコオロギ相撲なんですけど。ほら、聞いたことありませんか?
 ラストエンペラーって映画にも出ていて、あの国では多くの人に楽しまれています。
 唐や宋の時代にコロオギの飼育指南書が書かれている程、古い文化なんですって。
 今でも年に何度か、大きな大会が開かれていますよ。
 都市対抗全中華対決とか何とか、大いに盛り上がっているみたいです」

「私があちらを訪れている時、これ用のコオロギを扱っている業者が逮捕されたんです。
 賭け事にもよく使われるので、強いコオロギの血筋を飼っている家は、それは結構な
 大商いをしているんだそうですよ。
 逮捕されたのは、そういうブリーダーだったんですけどね。
 何でも不法な商取引をしたということでしたが、闘蟋筋では、専ら別の理由だろうと
 噂されていました。
 それによると、逮捕された男はずば抜けて強いコオロギを作るノウハウを持っていて、
 しかしどうやらそれが違法な類のものであったというのです」