知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

棚田の多い山奥の邑で、ある朝騒動が持ち上がった。
邑の外から来たらしい様子の男を、何人かの邑人が取り囲んで責め立てている。
彼が騒ぎを聞きつけた時には、既にかなりの人集りができていた。

何事かと見ていると、男はどうやら手中の何かを守ろうとしているようだ。
邑人がそれを奪おうとすると、大声を出して威嚇している。

いきなり、男は殴り倒された。
馬乗りになった邑人たちが小袋を取り上げ、中を確認して怒声を上げた。
サッと取り囲んだ空気が変わるのがわかる

集まった人々が皆、ひどく腹を立てている印象を受けた。

今にも私刑が始まりそうな雰囲気に彼が困惑していると、顔見知りが忠告してくれた。

『関わるな。彼奴ら、殺されても仕方のないことをやろうとしてたんだ。
 毒虫をこの邑に持ち込んで、放そうとしていやがった」

「毒虫というのが、あの手の中にあった袋の中身ですか。
 一体何なのですか?」