深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、ドライバーとピンを取り出す。

幸い、このタイプのトイレドアは仕組みも構造も知っている。
間もなく、ハンドルを内部の鍵ごと取り外すことに成功した。
タンクの上に置かれた姉妹の写真を手にトイレから出てみると、姉は呆れた顔を
していた。

「あんた、泥棒になれるんじゃない?」

…俺がバラせるのは、あくまでも室内の簡単な錠だけだから。
 ちょっとした裏技みたいなもんだから。
 荷物はそれで全部かい?
 じゃあもう出るぞ。

本当のことなのだが、どうしてか自分でも言い訳めいて聞こえてしまう。

ドアノブを元に戻し、入り口の工具箱を回収し、エレベーターで一階まで下りた。
来た時と同様、特に何も起こらなかった。

有り難いといえば有り難いが、不安といえば不安である。
何となく、後ろを誰かが着いてきているような気がして仕方がなかった。

その感覚は車を出して、走らせている最中もずっと続いていた。