「その痩せ具合、絶対おかしいです。危ないですよその御茶は」

必死で説得する彼に向かって、知り合いは静かに微笑んでいたという。

『大丈夫だって。身体の具合もすこぶる好調なんだ。
 目覚めも寝付きもいいしな。ただ… 』

「ただ、何ですか?」

『猿に付きまとわれるのが鬱陶しいだけだ』

何でもあの茶を飲み始めてから、猿のような影が見えるようになったのだという。

『飲んで一息ついてるとさ、いつの間にか目と鼻の距離にいるんだよ。
 ボンヤリとしてて猿っぽいとしか表現できない、黒い影がね。
 眼だけがギラギラと真っ赤に揺らいでるけど、ただ傍らにじっとしているだけ。
 手を出してくる訳でもないから、放っている』

知り合いは何でもないことのように言い放ったらしい。

「思うに、あの茶葉には何らかの幻覚作用があったんじゃないですかね。
 劇的に痩せてしまったのはその副作用でしょう。そう、副作用。
 ですからアレは本来、ダイエットなどに使われる物ではないと思うのです」
というのが彼の推測だ。

つづく