『根っ子で養分が採れている間はいいんだけど、そこの土地が枯れてくると、
 根を自ら引き抜いて、狩りに出掛けるというんです。
 地に植わっている間は、まだ花らしい名前で呼ばれているんですが、獲物を
 探して彷徨いだすと、狼喰らいって呼ばれるようになるんです』

『萼か花弁のどこかに、まるで牙のような突起が生えていて、それで獣を殺すと
 いう話です。死体を確保するとそこに陣取り、根を這わして啜るのだとか。
 実を結ぶだけの蓄えが出来ると、根を下ろし種を作って枯れるそうで。
 アレが出るようになるってことは、その土地が荒れてきたってことなんです。
 随分長いこと、出たって噂を聞いていなかったのに…

現在その岩山のある地方は、外国人が立ち入られなくなっているという。

「大陸が荒廃しているってニュースを聞く度に、あの岩山を思い出すのです。
 もうじき狼喰らいの群れが、ズルズルと湧き出てくるんじゃないのかって。
 いやもしかすると、狼喰らい自体が生き残っていないのかもしれませんが」

どこか寂しそうに彼は言っていた。