知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
人里離れた岩山で、案内人と野営していた時のこと。
夜中、怪しい物音が近づいてくるのに気が付き、息を殺した。
彼らのいる岩棚のすぐ真下を、何か大きな物がズルズルと這っていた。
案内人も緊張した面持ちで、彼に声を立てるなと合図する。
音が遠くに去ってから、ようやく案内人が息を吐いた。
『危なかった。あれは多分、狼喰らいって化け物。
名前の通り狼でも襲って喰ってしまう、でっかい口だけの怪物です』
朝になって降りてみると、地面には何かが這いずったような痕が残されていた。
そこかしこで肉が傷んだ時に出るような、どこか甘い腐敗臭が漂っている。
一体どんな動物なんでしょうか、こんな不気味な痕跡を残すなんて?
『動物じゃないよ。植物なんですって』
若い案内人は嘆息しながら説明してくれた。
『僕は見たことはないけど、葉も茎も無くて、大きな花だけが地表すれすれに
出ているという、何とも変わった植物なんだそうです。
この独特の残り香は、その花の匂いなんだとか。
腐肉を食べる生き物を寄せるためなんですかね』
つづく
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
人里離れた岩山で、案内人と野営していた時のこと。
夜中、怪しい物音が近づいてくるのに気が付き、息を殺した。
彼らのいる岩棚のすぐ真下を、何か大きな物がズルズルと這っていた。
案内人も緊張した面持ちで、彼に声を立てるなと合図する。
音が遠くに去ってから、ようやく案内人が息を吐いた。
『危なかった。あれは多分、狼喰らいって化け物。
名前の通り狼でも襲って喰ってしまう、でっかい口だけの怪物です』
朝になって降りてみると、地面には何かが這いずったような痕が残されていた。
そこかしこで肉が傷んだ時に出るような、どこか甘い腐敗臭が漂っている。
一体どんな動物なんでしょうか、こんな不気味な痕跡を残すなんて?
『動物じゃないよ。植物なんですって』
若い案内人は嘆息しながら説明してくれた。
『僕は見たことはないけど、葉も茎も無くて、大きな花だけが地表すれすれに
出ているという、何とも変わった植物なんだそうです。
この独特の残り香は、その花の匂いなんだとか。
腐肉を食べる生き物を寄せるためなんですかね』
つづく