知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。

その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

山村に逗留していると、そこの男が奇妙な乾物を幾つか持ち込んできた。
薄紫がかった灰白色の植物のものだ。掌からはみ出すほどの大きさがある。

訛りの酷い男の話を聞くうち、これがある種の冬虫夏草らしいとわかった。
最も中国で冬虫夏草と呼べるのは、特定種類の蛾の幼虫に寄生する物だけらしいので、
ここでは単に虫草と記しておく。

『ただの虫草じゃないよ』自慢気に男は続けた。

『これは人の死体にだけ憑いて生える、特別なヤツなんだ』

不意に幻覚に襲われた。
倒れ伏した腐乱死体から、今手にしている草が幾つも幾つも生え伸びている風景。
非常におぞましい感じを覚えたのだという。

「えらく高いこと吹っ掛けられたんで、結局買わなかったのですけどね」
少しだけ笑いながら彼はそう言っていた。

つづく