彼が遊具を持って猫の所へ行くと「あとでネ」と何度か言われたのだそうだ。

また庭で転げたりすると「あぶない!」と声をかけられた。

縁側で誰かが鼻歌を歌ってるなと目を向けると、そこには猫の背中があるだけ
だったりもした。

朝寝坊して布団の中でグズっていると、枕元にやってきて寝惚け眼をのぞき込み、
「うふふ」と笑って頬に猫パンチしたきたこともあった。

そんな真似をするのは彼の前だけだったようで、家族は誰も彼の言うことを信じて
くれなかった。ただ一人、祖母だけが
「猫泥棒に盗られていたのだから、そういうこともあるかもしれない」
と頷いてくれたそうだ。

「子供の仲間内じゃ、家のニャンコもそうだってヤツが何人かいたんだ。
 まぁ自分でも他人にそう聞かされたら、まず信じないだろうなぁとは思うけど。
 猫? それから少し経ったら喋ることもなくなって、普通に戻っちまったよ。
 ホッとしたけど、ちょっと残念だったなぁ」

彼は今でもちょくちょく里帰りをしている。

近所の猫がしばらく姿を消していたという噂を聞く度に、
「猫泥棒、健在なのかな」そう考えてしまうそうだ。