友人の話。

彼は幼年期を山中の実家で過ごしたが、その集落はやたらと猫が多かったらしい。

ある時、見慣れた猫の姿が次々と消えたことがあった。
彼の猫もいなくなってしまい、泣きながら暗くなるまで探した記憶があるそうだ。
結局見つからずに落ち込む彼を、祖母がこう言って慰めた。

「ここの山奥にはずっと昔から、猫泥棒ってのがいるんだよ。
 時たま里から猫をかっぱらうけど、大抵一月もすればちゃんと里に帰すから。
 だから、もうちょっと待ってみてごらん」

祖母の言った通り、しばらくして猫は家に帰ってきた。
大層喜んだのだが、同時にちょっと違和感を覚えたという。

猫がまるで、外見はそのままで中身だけが変わったかのような。
獣に似付かわしくない、理知的な雰囲気を醸し出すようになっていた—
そう彼は言う。

「いや家の猫、本当に賢くなっていたんだ。
 帰ってきてからのあいつ、時々人の言葉を喋ってたんだぜ」
つづく