振り向いた先には台所、その奥に風呂がある……引き戸は全部開けっ放しだった。
風呂には婆ちゃんが浸かってた。服のまま。水に。顔色はまたえらく悪い。というより土気色だ。
(普通じゃない……)
叫び出しそうになった俺をシッと制止した兄貴は、スキー板を見せながら、
「ちょっと滑ろうと思って」
えらくにこやかに答えた。
そう、と婆ちゃんは答えて、俺達はゆっくりと外に出て、庭先、家が見えなくなったところで
猛烈ダッシュして、家とは正反対の方向に逃げ出した。
遭難してもおかしくない状況だった訳なんだが、運よく探しにきてた親父たちの翳す
松明の明かりを見つけて、無事、爺さん家に帰ってこれた。
後から聞いた話だと、あそこらにはもう廃屋しかないとのことで、人も住んでないとのこと。
あの婆ちゃんのことは未だわからずじまい。
少し落ち着いてから兄貴に、「なんであの家変だと思ったの?」って聞いたら、
案内された部屋が仏間で、変だなと思いつつ、寝転んでたら、よく仏間の天井に飾られてる
故人の写真の中にあの婆ちゃんを見つけたんだと。
ただな、服着たまま冷水に浸かる婆ちゃんの夢、雪降ると未だに見るんだよ。
トラウマからくる単なる夢ならいいんだけど……その夢で兄貴と俺、大人になってんだよね。
逃げる時、車で逃げてるし……