宮司は難しい顔をして、
「腐っても霊場だ、今から私が言う話は聞かなかった事にしてくれ」
そう前置きし、語り始めた。
これだけ険しい道な為、確かに落下事故も起こりはするが、
死傷者などは滅多に出ない。
稀に起こる事故の大半は独りで登った者が遭うのだそうだ。
落ちた人間は揃って、『猿に襲われた』という
何でも、
この山の猿の中には人間そっくりの声で叫ぶ猿が居て
早朝や夜、独りで登ろうとすると
だれもいないハズなのに自分を呼ぶ声がするという
それが本当に猿なのかどうかは分からないが。
前々年も一人、早朝に登った参拝者が 崖から落ちた。
発見された時にはまだ息が有ったらしい
が、病院に着く前に亡くなったのだという。
「もう少し見つけるのが早かったら」と宮司は呟いた
私が「まるで見たかのように話しますね」と聞くと
「...見つけたのはワシだからな。
猿ども、割れた頭から脳みそ掻き出して食っていやがった」
宮司は吐き捨てるようにそう言った。