次の日、日が昇る前から立つことにする
爺さんが「朝はやめとけ」と言うが、
私が 正午までに登って下山したい旨を云うと
「猿に気ィつけろ」とだけ念を押された。
しばらく歩くと
高さ100㍍、角度は70度を超える崖に着く
べらぼうに高い、下から見上げるだけで眩暈がする。
そこには2本の長い鎖が打ち込まれており、
それだけを足場にして登れというのである。
実際 祖父に連れられ、何度か来た事はあり いつもは迂回ルートを通っていたが、
今年こそは..と
若さ故の過ちか 鎖場のルートを選んでしまった。
朝露で鎖が湿って滑りやすい、四苦八苦しながら半分くらい登った頃
足元で
『お~い』 と呼ぶ声がした。
うっかり下を見てしまう、霧でよくは見えないが高さで頭がクラクラする。
もう一度、足元で
『お~い』 と呼ぶので返事をしようとした——
瞬間。
背中がズシッと重くなった。
身体全体がガクンと揺れた。
何かが、
何かが背中にしがみ付いている!
つづく