読経が始まってしばらく経った時だ。本堂の入り口、つまりわたしとkのすぐ後ろで物音がした。
何の音だろうと耳をすましていると、どうも人の足音のように聞こえる。しかも靴の中にたっぷり水を入れたまま歩いているような、グチョッ、グチョッ・・という足音だ。
それから、誰かにジッと見られているような嫌な感覚。思わず背筋がゾッとしてkの方を見ると、彼も同じものを感じたようにわたしを見ていた。
和尚さん・・・助けを求めるようにわたしたちは小声で坊さんを呼んだ。が、坊さんは左手をちょっと揚げてわたしたちを制した。
そのまま大人しくしていろ・・・そう合図しているようだった。
読経の間中、その不気味な足音と視線は続いた。これからどうなってしまうんだろう、わたしたちは訳もなく不安になり、
半ベソ状態だった。
やがてお経が終わると、正体不明な音も視線も、綺麗に消えた。
私達は緊張の糸が切れた勢いで坊さんにしがみついた。
つづく